【野球肩の症例】肩インターナル・インピンジメント
野球肩、投球動作中の痛みで来院
肩インターナルインピンジメントの疑い
肩と腕に痛みを感じる
八王子市在住 30代男性 公務員
【初回時の訴えとお悩み】
- 一年ほど前から腕を上げるときに肩関節に痛みを感じるようになった
- ドライヤーを使うときや髪の毛にクシを通すような動作で肩にズキっと痛みを感じる
- 投球動作中に腕を高く上げるときに肩と腕に痛みを感じる
- 肩の痛みが徐々に強くなり、今はボールを握ると肩が抜けそうな感覚がある
- 肩と腕の痛みのためにこの数カ月は野球の試合や練習を休んでいる
- 以前から体が硬くなり、背骨の柔軟性が落ちてきたように思う
- 整形外科に受診したところ、レントゲンでは肩関節の空間が狭くなっていると言われた
- 職場の同僚に相談したところ、紹介されてサンスマイル八王子に来院
【問診と検査】
- 座位の姿勢:背中猫背(背中を丸めた姿勢)、クレーンネック(頭部が体より前方に位置)
- 投球動作分析:コッキング期の肩関節外旋時に胸郭(肩甲骨・胸椎・肋骨)の伸展可動域低下、Late cockingで肩関節の外旋運動が過度に動き過ぎている(胸椎の反りが少ないため)
- 整形外科検査:Neer impingement sign陽性、上腕骨大結節付近と肩関節内部に痛みを誘発(棘上筋腱、上腕二頭筋腱付近)
- 可動域:肩関節外転100°+外旋150°で肩の痛みを誘発する、外旋の角度が大きい(動き過ぎている)、肩関節の内旋制限
- 可動域②:胸椎、肋骨の伸展制限、肩甲骨の下制・内旋制限
- 筋力検査:右ローテーターカフの筋力低下(棘上筋、肩甲下筋)、大円筋の筋力低下、
- 触診:右大胸筋・三角筋の筋緊張(強いコリ)、上腕二頭筋のトリガーポイント
- 触診②:右上腕骨頭の前方変位、鎖骨と肩甲骨のゆがみ(胸鎖関節、肩甲胸郭関節の制限)
- 触診③:背骨のゆがみ(頚椎、胸椎、肋椎関節)、骨盤のゆがみと捻じれ
【施術】
- 背骨の関節アジャストメント(頚椎、胸椎、肋椎関節)、骨盤矯正
- 大胸筋・三角筋・上腕二頭筋など胸部と肩の筋トリートメント(IASTM、LLLT、percussorなど)
- 肩関節の後方関節包の靭帯リリース、前包関節包の圧縮
- 右ローテーターカフの筋力強化エクササイズ(棘上筋、肩甲下筋)
- 肩関節の内旋可動訓練、胸椎・肩甲骨の伸展エクササイズ
- 腹部、殿部などの体幹トレーニング指導
【施術のご感想】
- 初回ご来院の際には腕を頭上に上げることができなかったが、施術後には楽に腕があがるようになりました。6回目の施術時には肩の痛みがだいぶ治まって、ドライヤーやクシを使うこともできるようになりました。
- 10回目の来院のときから軽いキャッチボールを始めて、教えてもらった肩や背骨のエクササイズを続けながら、徐々に投げる距離を長くしていくようにしました。
- いまでは肩の痛みはほとんどなくなり、カイロプラクティックを受けて体のバランスが良くなったおかげか、以前よりも楽に投球できるようになりました。
【担当コメント】
投球時の肩関節痛でご来院されたケースで、肩のインターナルインピンジメントによる痛みの誘発が疑われました。インピンジメント(impingement:衝突する)は、骨同士がぶつかりあったり、その際に組織を挟み込むときに起こる障害をいいます。今回は肩関節内(上腕骨と肩甲骨の間の関節)で、ローテーターカフの腱が挟まれていたことによって肩の痛みを生じていたようです。
肩に痛みを生じるインピンジメントは、生理的な限界を超えた過度なストレスが反復して組織に加わることで腱や関節包などを損傷する現象です。その主な原因は、胸椎・肩甲骨など胸郭のアライメント不良(ゆがみ、構造的なズレ)など回旋腱盤の機能不全など機能的な運動異常によるものと、腱板の断裂や骨棘形成などの病理的な問題があります。

投球動作のフェーズ
投球動作は大きく分けて4つのフェーズから成り立っています。コッキング期は、アーリーとレイトのフェイズに分けられます。肩インターナルインピンジメントは、このコッキング期に起こりやすい障害です。
- ワインドアップ期:ボールをもって振りかぶって体重のタメを作る。
- アーリー・コッキング期:投球方向に足を踏み出して接地し、体を傾斜させて並行移動させる。
- レイト・コッキング期:ステップ動作に続いて、体幹を回旋し、肩を外旋させる。→今回はここで肩の痛みの誘発をしている。体幹の捻りと腕の振りで大きな力を生み出している。
- アクセレーション期:ボールをリリースするまでの動作、下半身の運動エネルギーを肩や腕など上半身に伝える。
- フォロースルー期:投球動作の完了まで、上半身が前傾し、股関節に回旋が加わることで、減速による負荷を軽減している。

理想的な投球フォームとは?
理想的な投球動作は、肩や腕の力だけに頼ることなく、体幹や下半身など身体全体を効率よく使って、重心移動で得られた運動エネルギーを無理なくボールに伝えられる形です。投げるボールに勢いを持たせるためには、“手投げ”にならないように体幹や下半身との連動性を高めた動作を意識的に訓練することが必要です。
肩のインターナルインピンジメントでは、肩関節の前方の支持性を担う前方関節包が反復的な伸張によって伸ばされている(関節包が過度にストレッチされている)ことが多く、それがインピンジメントの原因にもつながります。関節包の支持性が低下した状態では、肩関節内の骨運動の軌道にもズレが生じ、運動のパターンにも異常が現れます。
投球動作のコッキング期に肩関節の外旋動作によって前方関節包が繰り返し引き延ばされることで関節包の長さと強さが低下することが原因です。結合組織からなる関節包や靭帯は筋肉とな異なり、自ら収縮して長さを短くすることがありません。
長年の投球動作の反復によって慢性的に関節包の線維が伸ばされて前方関節包による支持性が低下してしまうと、肩の外旋運動で関節の制限がかからずに通常よりも動きが亢進(制限が効かず、動き過ぎてしまうこと)要因になります。
投球のコッキング期に肩関節の外旋運動が大きくなる原因としては、胸椎や肩甲骨の伸展性の低下があります。レイト・コッキング期では胸を開いて背中を反らすことによって、腕のしなりを作り出すことが可能になります。胸郭(胸椎、肋骨、鎖骨、肩甲骨)の柔軟性が低下していると、体幹にしなりができずに肩関節だけで腕のしなりを作り出すことなり、前包関節包に過度な伸張負荷をかけることが予測されます。
肩の前方関節包を守るためには、胸郭の柔軟性を高めてしなやかな体幹を維持することが大切です。カイロプラクティックケアによる関節調整、筋トリートメントにより、ご自身のストレッチやエクササイズだけでは得ることのできない、胸郭や体幹の柔軟性向上と投球動作の連動性の改善を行うことが効果的です。
サンスマイル八王子カイロプラクティック・スポーツ整体院では、肩関節インピンジメントの原因となる骨格のゆがみ、姿勢の乱れ、運動神経の乱れ、筋力のアンバランスなどを評価し、一人ひとりの状態と症状に適した施術プランをご提案します。
カイロプラクティックの関節アジャストメント(歪み矯正)を行うことで、肩や腕の運動神経を正常化しながら筋肉や関節の使い方を正すことで、痛みの解消に加えて肩に負担のかからない投球動作の習得をお手伝いします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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